2019年4月5日作成
2019年6月6日9:03更新
授業日時と場所
- 水曜日16時40分から18時10分まで
- C-612セミナー室
線型代数とは
線型代数学は英語では linear algebra で,linear は 1 次式の意味です.一方の algebra の語源は,現在のウズベキスタン周辺であるホラズムの数学者ムハマド・ベン・ ムサ・アル・フワーリズミー (al-Khwarzmi) による al-jabr です.al-jabr は等式の両辺に同じ正の数を足す,あるいはかける操作を指し,両辺から同じ数を差し引く意味の wal muqabala と併せて,方程式を解くことを意味します.すなわち線形代数学は,一次方程式系を解くことや,そこから派生したアイデアを学ぶものです.
教科書について
教科書は特に指定しません.必要に応じて講義資料を配布します.
参考書としては次の2冊を挙げておきます.
- 佐武一郎著「線型代数学」(裳華房)
- 斎藤毅著「線形代数の世界 抽象数学の入り口」(東京大学出版会)
授業の進め方
授業は講義によります.授業の最後にはレポート課題を出します.履修者の皆さんは課題の解答をレポートにして,翌週の授業の最初に提出してください.
授業内容
以下はあくまで予定であり,事情により随時変更されることがあります.
4月10日 線型方程式系 (復習)
1.1. Gauss-Jordan 消去法
- 行基本変形
- 階段行列 (reduced row echelon form)
- Gauss-Jordan 消去法
1.2. 行列の階数
- と の解の構造
1.3. ベクトル表示
- 線型結合
4月17日 行列が定める線型写像 (復習)
2.1 線型写像
- 写像の復習
- 写像とその定義域,値域(または終域)
- 全射,単射,全単射
- 全単射の逆写像
- 写像, の合成$g\circ f: X\rightarrow Z$
- 線型写像の定義と特徴付け
- 線型写像の合成は行列の積を与える.
- 全単射である線型写像は可逆行列に,その逆写像は逆行列に対応する.
2.2 の部分空間
- 線型写像の像と核
- の部分空間,
- 線型関係と線型独立性
- 部分空間の基底
- 例:行列の像と核の基底の計算法
4月24日 休講
5月1日 即位の礼
5月8日 一般線型空間
3.1. 部分空間の次元
補題3.1. ;部分空間.
- が一次独立で,
- であれば,
.
系3.2. 部分空間の基底の元の個数は,基底のとり方によらず一定.その個数をの次元 (dimension)と呼んでと書く.
3.2. 線型空間
- 線型空間 (linear space)またはベクトル空間 (vector space)の定義
- の一次結合,その集合
- ベクトル空間の部分空間
- の一次独立性の定義,の基底
- が有限基底を持つとき,その個数をの次元 (dimension)と呼んでと書く.
3.3. 線型写像
- 線型写像の定義
- の像 と核
- をの階数という.
- ;線型写像,;の基底, ;の基底 s.t.
をの行列という.
5月15日 の内積
4.1. の内積の復習
定義4.1. (1) , の内積 (inner product)
(2) , が直交 (orthogonal, ) .
(3) の長さ (length) .長さがのベクトルを単位ベクトル (unit vector)という.定義 4.2. (1)ベクトルが正規直交 (orthonormal)
;Kroneckerの関数.
(2)特に次元部分空間の正規直交部分集合はの基底.これをの正規直交基底 (orthonormal basis)という.命題 4.1. ;部分空間.
(i) はの部分空間 (の直交補空間 (orthogonal complement)).
(ii) ;の正規直交基底.
,はとなるただ一つのの要素.
(iii) は線形写像 (への直交射影 (orthogonal projection)).4.2. Cauchy-Schwarzの不等式
補題 4.1 (Pythagoras の定理). (i) .
(ii) ;部分空間 , ().命題 4.2 (Cauchy-Schwarz の不等式). .
定義 4.3. は可逆.;その逆写像.
, , のなす角:4.3. Gram-Schmidtの直交化と分解
定理 4.1 (Gram-Schmidt の直交化). ;部分空間,;その基底.
, ().により定まるはの正規直交基底.
系4.1(QR分解). ;行列 s.t.
- ;行列 s.t. は正規直交,
- ;次正方上三角 (upper triangular)行列
s.t. .
5月22日 内積空間
- ベクトル空間に加えてベクトル空間も扱う.
- ベクトル空間上の内積,内積空間とその例
- 内積空間の元のノルム,内積空間の距離関数,内積空間での直交関係
- 内積空間の有限次元部分空間への直交射影,Gram-Schmidtの直交化
- 例:Fourier展開への導入
5月29日 行列式 (その1)
6.1. 対称群
- 次の置換 (permutation)と対称群 (symmetric group)
- 次巡回置換 (-cycle) , 特に互換 (transposition).
- 置換の互いに交わらない巡回置換の積への分解.
- 置換の符号
6.2. 行列式
- 次正方行列の行列式 (determinant)
- 基本性質:
- はの各行ベクトル,列ベクトルの線型関数.
- はの行または列について交代的.
- 階段行列による行列式の計算法
- .
- が可逆なら,
6月5日 行列式(その2)
7.1. Laplace展開
定理7.1. 次正方行列に対して
ただし,
はの小行列 (-minor).
7.2. 行列式と体積
定義7.1. の張る平行次元体 (-parallelpiped)
の次元体積 (-volume) を,に関して帰納的に
と定める.ただし.
定理7.2. に対して,行列を取れば,
7.3. Cramerの公式
定理7.3. 次可逆行列に対して,連立一次方程式の解は
特に
7.4. 線形変換の行列式
次元ベクトル空間上の線形変換の行列式 . ただしはの基底.
6月12日 Jordan 標準形
6月19日 Jordan 分解
6月26日 エルミート形式
7月3日 特異値分解
7月10日 指数写像
7月17日 双対空間
7月24日 テンソル積.