2019年9月19日12:10作成
2020年2月12日19:33更新
授業の日時、場所
- 火曜日4時限目
- 2202教室
教科書
この授業は次の教科書に沿って進めます。特に演習は教科書中の演習問題を中心に行います。
微分積分講義 南和彦 著 裳華房
授業の進め方、演習について
- 毎回授業の最初に演習をします。
- 前回の授業のときにそれぞれの演習問題の解答者を指名しておきます。指名された人は授業時間が始まるまでに黒板に解答を書いておいてください。教科書の巻末にある解答を写すのではなく、自分の理解を反映して自身の言葉で書いてください。それが自分のためにもクラスメートのためにも大切です。
- 黒板の解答に沿って、理解すべき点や解答で書くべきことを私が説明します。なるべくきちんとした解答が黒板に残るように朱筆を加えますが、説明の方もよく聞いてください。
- なお、再履修の方は学期半ばまで履修者名簿に名前がないため、こちらから指名するのは難しいかもしれません。積極的に自分から名乗り出て演習を解くようにしてください。
- 続いて講義を行います。講義では
- 基本的な概念 (定義) の説明。
- それらの概念の満たす性質 (命題、定理など)。
- それらの性質を使って計算する方法 (例題) の解説。
についてお話しします。ときどき命題や定理の証明もしますが、それは内容をよりよく理解して使えるようになってもらうためで、証明を覚える必要は特にありません。
- 最後に次回の演習の解答者を決めます。基本的にはこちらで指名します。演習では主に教科書の問や章末問題を解いてもらいます。
- いうまでもなく数学は自分で考えて練習問題を解くことで理解していく科目です。毎回の練習問題は解答者だけでなく履修者全員の宿題です。1時間やそこらで解ける量ですから、必ず授業があったその日のうちに解いて、習った内容を理解しておきましょう。一人では解けないときには皆で相談し、助け合って問題を解くことも大切な演習の目的です。
授業内容
10月8日 の位相と連続関数
1.1. の復習
- .
- , の内積
とが直交する .
の長さまたはノルム
基本性質
- Pythagorasの定理:ならば,
- の方向への直交射影
- Cauchy-Schwarzの不等式:, ,
定理. は次の三性質を持つ.
- であり, .
- , (, ).
- 三角不等式:.
1.2. の部分集合
- とに対して,
- ; 部分集合
がの内点 s.t. .
がの外点 s.t. .
がの境界点 , かつ.
; の境界点の集合.
; の閉包.
定義. ; 部分集合.関数がでに収束: とは,
1.3. 演習問題
問題1.1. の任意の元は内点であることを示せ.
問題1.2. に対してを求めよ.
教科書p.137の問題4.1.
10月15日 偏微分と全微分
2.1. 偏微分
定義 (4.1.4節) ;部分集合.がで連続
.
定義 (4.2.1, 4.2.2節). ;開集合, ; 関数,. に対する方向微分
が存在するとき,はで方向微分可能という.特に
をのでのについての(resp. についての) 偏微分という.
2.2. 全微分
定義4.1, 定理4.3, 4.4. ;がで全微分可能
s.t.
s.t. , .
このとき定義から, .
定義. がで級
がで偏微分可能で,, はで連続.
定理4.5. 級なら全微分可能.
記号:
2.3. 演習問題
問題2.1. 教科書p.143の問題4.4.
問題2.2. 次の関数の偏微分を求めよ.
問題2.3. 教科書p.150の問題4.6.
10月22日 即位礼正殿の儀
10月24日(木曜日!)休講
10月29日 Jacobi 行列と連鎖律
3.1. Jacobi行列
- 上の関数の組が与える写像
が偏微分可能なとき,そのJacobi行列を
と定める.
3.2. 連鎖葎
定理4.6, 4.7 (連鎖葎). , ; 開集合., ; 級関数,がを満たすとき,
3.3. 演習問題
教科書158ページの問題4.9, 4.10 (1).
11月5日 二変数関数の Taylor の定理
4.1. 高階偏導関数(4.5.1節)
- 高階偏導関数: , などと書く.
- 級関数,級関数.
定理4.1. が級なら.
4.2. Taylorの定理
定理4.2. が級関数,がを満たすとき,あるに対して
4.3. 演習問題
教科書p.166の問題4.15, 4.16, 4.19.
11月12日 固有値と固有ベクトル
5.1. 固有値と固有ベクトル
定義 5.1. ;次正方行列., がの固有ベクトル (eigenvector)
s.t.
このときのをの固有値 (eigenvalue)と呼び,をの固有ベクトルという.
補題 5.1. が次正方行列の固有値であるためには,であることが必要十分.
定義 5.2. 次正方行列の特性多項式 (characteristic polynomial)
系 5.1. 次正方行列の固有値はの実数解.
定義5.3. 次正方行列とに対して
をの固有空間 (-eigenspace)という.
5.2. 固有基底と対角化
定義 5.4. 次正方行列を取る.の固有ベクトルからなるの基底をの固有基底 (eigenbasis)という.
の固有基底は必ずしも存在するとは限らない.
命題5.1. 次正方行列が固有基底を持つとき,は正則行列で,
5.3. 演習問題
問題 5.1. 次の行列の固有基底があるか否かを判定し,固有基底を持つ場合には対角化せよ.
11月19日 対称行列と二次形式
6.1. 対称行列
- が複素係数次正方行列の複素固有ベクトル:
このときをの複素固有値という.
- , の内積
内積の性質は対称性がエルミート性
に変わること以外,実係数の場合と同様.
補題 6.1. (実)対称行列の特性方程式の解は全て実数.
補題 6.2. 対称行列の異なる固有値, の固有空間とは互いに直交する.
定義 6.1. 次正方行列が直交対角化可能 (orthogonally diagonalizable)とは,ある直交行列に対してが対角行列になること.
定理 6.1 (スペクトル定理). 次正方行列が直交対角化可能であるためには,が対称行列であることが必要十分.
6.2. 二次形式
定義 6.2. 上の二次斉次関数
を変数二次形式 (quadratic form)という.対称行列
を用いると,と書ける.
定義 6.3. 変数二次形式が正定値 (positive definite)とは,任意の, に対してとなること.
命題 6.1. 二次形式が正定値であるためには,付随する対称行列の全ての固有値が正であることが必要十分.
定義6.4. 次正方行列とに対して
をの次主小行列 (-th. principal minor matrix)という.
定理 6.2. 二次形式が正定値であるためには,, ()であることが必要十分.
6.3. 演習問題
問題6.1. 次の対称行列を直交対角化せよ.
11月26日 二変数関数の極値
7.1. 2変数関数の極値のための十分条件(4.7節)
定理4.9. を級関数とする.がで極値を取るならば,.
定義4.4. のHesse行列を.
前回の定理6.2を使って次が得られる.
定理4.10. 級関数がを満たすとする.
(1) のとき,次の2つの可能性がある:
- ならはで極小値を取る.
- ならはで極大値を取る.
7.2. 陰関数(4.6.3節)
陰関数定理4.8. ; 級関数,かつとする.
(i) , ; 級関数 s.t. かつ.
(ii)そのとき.
7.3. 演習問題
教科書p.185の問題4.28.
12月3日 中間テスト
12月10日 陰関数の定理
9.1. 陰関数の補足
- についての陰関数定理4.8とについての陰関数定理4.8’
例9.1. 定理4.8の状況で(ii)の式を再度微分すると
例題4.9. 陰関数の極値の求め方.
9.2. 曲線の特異点
- ; 級関数に対し,は曲線.
- がの特異点 .
- 復習:のでの接線の方程式は.
例9.2. (特異点の例)
- 尖点
- 結節点
- 孤立点
9.3. 演習問題
教科書p.176の問題4.24, 4.26, 問題4.27.
12月17日 条件付き極値
10.1. 条件付き極値(4.7.3節)
定理4.11+ , ;級関数.
(i) のへの制限が,の非特異点で極値を取る. , ().
(ii) (i)の条件に加えて
が正(負)なら,はで極小値(極大値)を取る.
10.2. 演習問題
教科書p.185の問題4.29, 4.30, 4.31, 4.32.
12月24日 微分方程式とは
11.1. 基礎概念
- 階(常)微分方程式 (ordinary differential equation)
- s.t. をこの微分方程式の解 (solution)という.
- 個のパラメータによる解を一般解 (general solution)という.
- そのパラメータに特定の値を代入した解が特殊解 (particular solution).
- 一般解のパラメータ族に含まれない解を特異解 (singular solution)という.
- 解で初期条件を満たすものを求めることを初期値問題 (initial value problem)という.
- 以下では正規形(explicit)微分方程式のみを扱う.
11.2. 求積法 (quadrature)
- 変数分離形 (separable) .
- 同次形 (homogeneous) として,
11.3. 演習問題
教科書p.126の問題3.19 (2), (5), (8), (11), 問題3.20, 問題3.21 (2).
1月7日 線形微分方程式
12.1. 一階線形微分方程式
- 線形微分方程式 (linear differential equation)
さらにのとき,同次 (homogeneous)であるという.
- 一階線形微分方程式
の解法.
- Bernoulli方程式は一階線形微分方程式に帰着できる.
- Riccati方程式の特殊解から一般解が構成できる.
12.2. 2階同次線形方程式
- 2階の同次線形微分方程式
の解空間.その基底の Wronskian による判定法.
- 定数係数の同次線形微分方程式
の解空間の基底の求め方.
1月14日 月曜日の授業を行う
1月21日 非斉次線形微分方程式
1月28日 出張のため休講
2月4日 期末テスト
成績評価について
成績は中間、期末テストの結果を総合的に判断して行います.
中間テストについて
12月3日の授業の時間に中間テストを行いました.
- 範囲は10月8日から11月26日までの授業内容です.
- テキスト,ノートなどの持ち込みは禁止します.当日は筆記具,学生証と計時機能のみを持つ時計を忘れずに持参してください.
期末テストについて
2月4日の授業の時間に,授業の教室で期末テストを行いました.
2月12日(水)から基幹教育教務係で,期末テスト答案を返却してもらっています.履修者の皆さんは3月末日までに,各自の答案を受け取りに行ってください.
- 範囲は11月4日から1月21日までの授業内容:偏微分とその応用,および,微分方程式です.
- テキスト,ノートなどの持ち込みは禁止します.
- 当日は筆記具,学生証と計時機能のみを持つ時計を忘れずに持参してください.
- 忌引,傷病などでやむを得ず欠席する場合は試験開始時刻までに基幹教育教務係まで連絡すること.
- 中間テストを受験していない人は期末テストを受けることはできません.