微分積分学・同演習I (2016)

2016-04-01 (金) 08:19 作成
2016-08-09 (火) 08:08 最終更新

授業の日時、場所

  • 金曜日1時限目
  • 伊都キャンパス全学講義棟2204号室

教科書

この授業は次の教科書に沿って進めます。特に演習は教科書中の演習問題を中心に行います。

微分積分学講義
野村隆昭 著
共立出版

授業の進め方、演習について

  1. 毎回授業の最初に演習をします。
    1. 前回の授業のときにそれぞれの演習問題の解答者を指名しておきます。指名された人は授業時間が始まるまでに黒板に解答を書いておいてください。教科書の巻末にある解答を写すのではなく、自分の理解を反映して自身の言葉で書いてください。それが自分のためにもクラスメートのためにも大切です。
    2. 黒板の解答に沿って、理解すべき点や解答で書くべきことを私が説明します。なるべくきちんとした解答が黒板に残るように朱筆を加えますが、説明の方もよく聞いてください。
    3. なお、再履修の方は学期半ばまで履修者名簿に名前がないため、こちらから指名するのは難しいかもしれません。積極的に自分から名乗り出て演習を解くようにしてください。
  2. 続いて講義を行います。講義では
    1. 基本的な概念 (定義) の説明。
    2. それらの概念の満たす性質 (命題、定理など)。
    3. それらの性質を使って計算する方法 (例題) の解説。

    についてお話しします。ときどき命題や定理の証明もしますが、それは内容をよりよく理解して使えるようになってもらうためで、証明を覚える必要は特にありません。

  3. 最後に次回の演習の解答者を決めます。基本的にはこちらで指名します。演習では主に教科書の問や章末問題を解いてもらいます。
  4. いうまでもなく数学は自分で考えて練習問題を解くことで理解していく科目です。毎回の練習問題は解答者だけでなく履修者全員の宿題です。1時間やそこらで解ける量ですから、必ず授業があったその日のうちに解いて、習った内容を理解しておきましょう。一人では解けないときには皆で相談し、助け合って問題を解くことも大切な演習の目的です。

授業内容

4月

  • 15日 数列と関数の極限
    • ガイダンス
    • \mathbb{N}\subset \mathbb{Z}\subset \mathbb{Q}\subset \mathbb{R}\subset\mathbb{C}
    • 区間[a,b], (a,b)(a,b][a,b)[a,+\infty)(-\infty,b]など
    • \forall\exists
    • 写像f:X\rightarrow Y, 定義域と値域
    • 数列の極限の定義: \varepsilonN論法
    • 極限の計算方法: 四則演算との可換性,はさみうちの原理
  • 22日 実数の連続性
    • \displaystyle \lim_{n\to\infty}\,a_n=\pm\infty の定義,はさみうちの原理の証明
    • 実数の連続性:Dedekindの切断
    • 上 (下) に有界な集合 S\subset \mathbb{R} の上界 (下界),上限 \sup S (下限) \inf S
    • 有界単調増加 (減少) 数列 {a_n} はその上限 (下限) に収束.
    • コーシー列とその収束
    • 演習問題
  • 29日 昭和の日

5月

  • 6日関数の極限と連続関数
    • 演習 特に \displaystyle{\lim_{n\to\infty}}\sqrt[n]{a}=1 の証明
    • 前回の復習,Bolzano-Weierstrass の定理
    • 関数の極限 \displaystyle{\lim_{x\to c}\,f(x)}, 右極限 \displaystyle{\lim_{x\to c+0}\,f(x)}, 左極限 \displaystyle{\lim_{x\to c-0}\,f(x)}
    • 連続関数
    • 中間値の定理
    • 演習問題
  • 13日 微分と導関数
    • 連続関数の性質:
      • 中間値の定理
      • 閉区間を閉区間に移すこと
    • 平均変化率関数 \Delta_af(x)=\dfrac{f(x)-f(a)}{x-a} と微分可能性
    • 導関数
  • 20日 微分の性質
    • 基本性質:線型性,Leibnitzルール,商の微分
    • 合成関数の微分
    • 連続単調関数の逆関数とその連続性
    • 逆関数の微分
    • 例:逆三角関数
    • 平均値の定理と Rolle の定理
    • 演習問題
  • 27日 Taylor の定理

6月

  • 3日 不定形の極限
    • 中間テストの連絡
    • 高位の無限大 f\gg g,無限小 f=o(g)
    • 対数関数,多項式,指数関数の無限大での比較
    • 高位の無限小を用いたTaylorの定理,高位の無限小の演算
    • 指数関数,対数関数,三角関数の “Taylor展開”
    • 不定形の極限への応用
    • L’Hôpital の定理
    • 演習問題
  • 10日 定積分の定義
    • 区間の分割と Riemann 和
    • 区間上の積分可能関数と定積分
    • Darboux の定理
    • 区間上の連続関数の一様連続性
    • 連続関数の積分可能性
    • 演習問題
  • 17日 中間テスト 解答のページ
  • 24日 定積分の性質
    • 中間テスト答案返却
    • 連続関数の可積分性の証明,区分的に連続な関数の場合
    • 定積分の性質:線形性,区間に関する加法性,正値性(単調性).
    • 区間に関する加法性を受けて

      \displaystyle \int_{b}^{a}\,f(x)\,dx:=-\int_{a}^{b}\,f(x)\,dx

      と定義.

    • 微積分学の基本定理と原始関数
    • 演習問題

7月

  • 1日 原始関数の計算法
    • 原始関数は定数項を除いて一意
    • 部分積分
    • 置換積分
    • 有理関数の部分分数展開
    • 有理関数の原始関数の漸化式による計算法
    • 演習問題
  • 8日 広義積分
    • R(\cos x,\sin x) の原始関数
    • 無理式の原始関数の計算法の例
    • 広義積分の定義1:積分区間の片側が抜けている場合
    • 広義積分の定義2:積分区間の両端が抜けている場合
    • 広義積分の収束判定条件,絶対収束性
    • 演習問題
  • 15日 \Gamma関数とB関数
  • 22日 演習と復習
    • 授業アンケート実施
    • 広義積分の計算上の注意:部分積分や置換積分などは
      • 広義積分を定積分の極限に書いて,
      • 極限の中の定積分に適用する.
    • 高校数学Bの復習:任意の自然数 n\in \mathbb{N} に対する主張は数学的帰納法で証明する.
    • 授業内容の復習
  • 29日 期末テスト 解答のページ

成績評価について

成績は中間、期末テストの結果演習を総合的に判断して行います。
8月5日の午前中に成績を登録しました.

中間テストの連絡

6月17日の授業の時間に中間テストを行いました.解答はこちらにあります.

  • 範囲は教科書の2章 数列と関数の極限,3章 実数の連続性,4章 1変数関数の微分 です.
  • 教科書,ノートなどの持ち込みは禁止します.基本的な定義や定理は頭に入れてきてください.
  • 当日は学生証時計を忘れないようにしてください.携帯電話の時計機能は使えません.
  • 忌引や交通事故などにより,やむを得ず欠席する場合は事前に基幹教育教務係まで連絡してください.

期末テストの連絡

7月29日の授業の時間に期末テストを行いました.解答はこちらにあります.

8月5日:成績登録手続きをやり直したため,答案返却が遅れてしまいました.履修生の皆さんには迷惑をかけてしまい,申し訳ありません.

  • 範囲は強化書の 5 章 1 変数関数の積分 です.
  • 教科書,ノートなどの持ち込みは禁止します.基本的な定義や定理は頭に入れてきてください.
  • 当日は学生証時計を忘れないようにしてください.携帯電話の時計機能は使えません.
  • 忌引や交通事故などにより,やむを得ず欠席する場合は事前に基幹教育教務係まで連絡してください.

期末テストの再試験について

8月12日金曜日の1時限目に一部の学生の方を対象に期末テストの再試験を行いました.

期末テスト答案返却について (2016年8月8日)

期末テスト答案を基幹教育教務係に預けてありますので,自身の答案を返却してもらってください.期限は9月中までで,それまでに受け取らなかった場合は,新学期に私から返却します.

演習問題

4月22日

2.1. 次の数列の極限を求めよ.
(1) \{\sqrt[n]{a}\}, (a>0),
(2) \displaystyle\left\{\frac{1+2+\dots+n}{n^{2}}\right\},
(3) \{\sqrt{n+1}-\sqrt{n}\}
2.2. 教科書の問題2.24.
2.3. 教科書の問題3.16.

5月6日

3.1. 教科書の問題2.33.
3.2. 関数 f: \mathbb{R}\ni x\mapsto |x|\in \mathbb{R} は連続か否かを判定せよ.
3.3. \cos \theta=\theta となる 0<\theta<\dfrac{\pi}{2} があることを証明せよ.
3.4. 奇数次の整式 $P(x)$ に対して,方程式 $P(x)=0$ は必ず実数解を持つことを示せ.

5月20日

5.1. 教科書の問題4.15.
5.2. 教科書の問題4.17.
5.3. 教科書の問題4.20.
5.4. 教科書の問題4.23.

5月27日

6.1. 教科書の問題4.37 (1).
6.2. 教科書の問題4.42.
6.3. f(x)=x^4 -6x^2+8x+25 の極値を求めよ.

6月3日

7.1. 教科書 p.55 の問題 4.55 (4)
7.2. 教科書 p.56 の問題 4.57 (2)
7.3. 教科書 p.60 の問題 4.73 (1)
7.4. 教科書 p.66 の問題 4.88 (1)

6月10日

8.1. 教科書p.73の問題5.9.
8.2. 教科書p.77の問題5.15.
8.3. 教科書p.79の問題5.19.

6月24日

10.1. 教科書p.82の問題5.28.
10.2. 教科書p.84の問題5.34.
10.3. 教科書p.85の問題5.35.

7月1日

11.1. 教科書 p.89 の問題 5.44 (1).
11.2. 教科書 p.89 の問題 5.45 (1).
11.3. 教科書 p.97 の問題 5.56 (1).
11.4. 教科書 p.98 の問題 5.58 (2).

7月8日

12.1. 教科書 p.100 の問題 5.62 (1).
12.2. 教科書 p.101 の問題 5.64 (1).
12.3. 不定積分 \displaystyle \int\,\sqrt{\frac{x-1}{2-x}}\,dx を求めよ.
12.4. 教科書 p.108 の問題 5.81.
12.5. 教科書 p.113 の問題 5.99 (1).

7月15日

13.1. 教科書 p.114 の問題 5.101 (1).
13.2. 教科書 p.115 の問題 5.103.
13.3. 同 問題 5.104.
13.4. 同 問題 5.106.
13.5. 教科書 p.116 の問題 5.108 (1).
13.6. 問題 5.108 (2).
13.7. 問題 5.108 (3).
13.8. 自然数 m \in\mathbb{N} に対して B(m,1) = \dfrac{\varGamma(m)\varGamma(1)}{\varGamma(m+1)} を示せ.
13.9. 前問を用いて,自然数 m, n \in\mathbb{N} に対して B(m, n) = \dfrac{\varGamma(m)\varGamma(n)}{\varGamma(m+n)} を示せ.

 

授業の補足

コーシー列の定義の訂正 (2016年4月22日)

\{a_n\} がコーシー列であるとは,

任意の \varepsilon >0 に対して,ある N\in \mathbb{N} があって

\displaystyle |a_n-a_m| <\varepsilon,\quad \forall n,\,\forall m> N

が成り立つことです.授業では \forall m> N が抜けていましたので,訂正します.

Leibniz ルールの証明 (2016年5月27日)

n についての帰納法による.n=1 のときは5月20日の授業で示した.n-1の場合を仮定すると,

\begin{pmatrix} n-1\\ k \end{pmatrix} +\begin{pmatrix} n-1 \\ k-1 \end{pmatrix} =\dfrac{(n-1)!}{k!(n-k-1)!}+\dfrac{(n-1)!}{(k-1)!(n-k)!}= \begin{pmatrix} n \\ k \end{pmatrix}

に注意して

\displaystyle (fg)^{(n)} =((fg)^{(n-1)})' =\sum_{k=0}^{n-1}\, \begin{pmatrix} n-1 \\ k \end{pmatrix}(f^{(n-k-1)}g^{(k)})'

\displaystyle =\sum_{k=0}^{n-1}\,\begin{pmatrix}n-1\\ k \end{pmatrix}\left(f^{(n-k)}g^{(k)}+f^{(n-k-1)}g^{(k+1)}\right)

\displaystyle =\sum_{k=0}^{n-1}\,\begin{pmatrix} n-1 \\ k \end{pmatrix} f^{(n-k)}g^{(k)}+\sum_{k=1}^{n}\,\begin{pmatrix}n-1\\ k-1 \end{pmatrix}f^{(n-k)}g^{(k)}

\displaystyle =f^{(n)}g+\sum_{k=1}^{n-1}\, \Bigl(\begin{pmatrix}n-1\\ k \end{pmatrix}+\begin{pmatrix}n-1\\ k-1 \end{pmatrix}\Bigr)f^{(n-k)}g^{(k)}+fg^{(n)}

\displaystyle =\sum_{k=0}^{n}\,\begin{pmatrix} n \\ k  \end{pmatrix} f^{(n-k)}g^{(k)}

が得られる.(証明終わり)

Taylor の定理の証明の訂正 (2016年5月27日)

証明で用いた定数 A の定義は

\displaystyle A:=\frac{(n+1)!}{(x-c)^{n+1}}\left(f(x)-\sum_{k=0}^{n}\,\frac{f^{(k)}(c)}{k!}(x-c)^{k}\right)

とすべきでした.授業ではカッコの中の f(x) が抜けていましたので,訂正します.